国連UNHCR難民映画祭2017

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東京上映『私たちが誇るもの ~アフリカン・レディース歌劇団~』トークイベントレポート

2017年10月17日

新着情報

東京上映『私たちが誇るもの ~アフリカン・レディース歌劇団~』トークイベントレポート

10月1日(日)、東京、表参道のスパイラルホールにて『私たちが誇るもの ~アフリカン・レディース歌劇団~』の上映後、JICA研究所で研究員を務める川口智恵さんをお迎えしてトークイベントが開催されました。司会は国連UNHCR協会広報担当の鈴木が務めました。

 

鈴木:
川口さんは、「紛争とジェンダーに基づく暴力」をテーマに研究されていますが、映画をご覧になっていかがだったでしょうか。
川口さん:
何のいわれもない暴力を受けた女性が、自分の力でその傷を癒そうとする姿に感動します。主人公の女性たちは紛争地域からオーストラリアに移られた方々であり、私が研究している、南スーダンからウガンダに逃げて定住地に暮らす人々と状況は違いますが、このような暴力によって心と身体に傷を負った人々に何をすべきか、というテーマは共通するものだと思います。
この映画では、第三国定住という、紛争で逃れた先ではない別の国に移住するプログラムの対象となった女性たちの新しい生活と回復が描かれています。しかし、私が研究対象にするウガンダ北部では、南スーダンから押し寄せる難民の方に、食べるもの、飲むもの、住むところ、という緊急の支援が優先し、トラウマケアまで手が回らないのが実情です。
鈴木:
主人公の女性たちは、被害者にもかかわらず、当初自分たちが悪かったのではないかと自らを責めて悩みます。彼女たちのような方にどのようなケアが必要なのでしょうか。
川口さん:
まず「マインドセットを変える」ということが重要だと思います。被害者は今まで生きてきた文化、社会規範、たとえば夫や父親に従うべきであるといった考えに囚われて自分たちを責めてしまいます。必要なのは物質的な支援に加えて、このような心のケアを早期に開始することだと思います。感情を言葉にするのは難しい、と主人公の一人は言っていました。彼女は4人の子供を育てる上で怒りや悲しみの感情を押し殺さなければならなかったのだと思います。しかし、歌劇ワークショップへの参加を通じて、辛い過去の感情や経験を言葉として表現することで新たな自分を見つけられたのだと思います。
鈴木:
4人の主人公のうち2人はオーストラリアのUNHCR協会の親善大使として、自分たちの経験を活かし、難民を代弁する役割を担っています。
川口さん:
現地での支援には、短期的なものだけでなく、職業訓練、教育というこれから人生を生きぬいていくための力を身に着けてもらうための中長期的な視点に立った包括的な支援が求められています。ただそれは一方的なものではありません。現地では、私も難民の女性のたくましさ、オープンマインドに励まされました。難民と私たちは、協力して困難を乗り越えるパートナーなのだと感じます。

最後に川口さんから会場の皆さんにメッセージをいただきました。「映画の女性たちは“価値あるリスク”をとって問題を訴えました。自分も研究者する上で協力していただく方々がとってくださる “価値あるリスク”を価値ある研究に変えて届けていきたいと思います。ぜひ皆さん一人ひとりにジェンダーにもとづく暴力にさらされる難民の実情に関心をもっていただき、支援へのご協力をいただければと思います。」

川口智恵さんの研究についてはこちらをご覧ください。