作品紹介『国境に生きる ~難民キャンプの小さな監督たち~』

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作品紹介『国境に生きる ~難民キャンプの小さな監督たち~』

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2014年の夏、イラクとシリアのクルディスタン地域におけるたび重なる攻撃により、多くのクルド人が避難を余儀なくされました。その多くは女性や子どもでした。クルド人のバフマン・ゴバディ監督はクルド人の子どもたちの願望に応え、映画を制作するプロジェクトを立ちあげます。

コバニとシンジャールにあるキャンプに住む子どもたちの中から8人を選び、ワークショップを通じて映像技術を教え、彼らの人生経験を直接世の中に伝えることが目標でした。

ドキュメンタリーと本人による再演が混ざったこれらの短編映画は、自分たちの経験を物語にしようとする子どもたちの努力の賜物です。

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“Shangal’s Beloved”- ハゼム・ホデイダ

両親が反政府勢力によって連れていかれたビルハートは、キャンプで病気の妹とおばあさんと一緒に両親を待ち続けています。

今も悪夢にうなされる妹は、一週間反政府勢力に拘束をされてから言葉を話すことができなくなりました。

そんな中ビルハート は道路に空き缶を置き続けます。

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“In Search of the Truth”- バスメ・スレイマン

シンジャール出身のバスメは、山で妹といたところ妹が連れて行かれました。彼女自身も連れて行かれそうになりましたが逃げることができました。

妹は殺されたのか、怪我を負わされたのか売られたのかは分かりません。しかしこのキャンプにいる多くの人が愛する誰かを失ってしまいました。

彼女はそうした人をインタビューすることにしました。

インタビューを通じて聞こえてきたのは彼らの悲痛な心の叫びでした。

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”Bread and Yogurt”-サミ・ホセイン

14歳のサミは反政府勢力に妹を連れて行かれ、父親は足を失いました。

くぐもった声の男達に囲まれ—、ハッと夢から起きるとテレビでは現状を伝えるニュースが流れていました。

サミと父、母の間には重い空気が流れます。

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“Our Film is Better”-ロナヒ・エザディン

コバニ出身のロナヒは反政府勢力によって住んでいる村を破壊されました。「こうしている間も私たちの兄弟、姉妹はテロリストと戦っている」とカメラを前に彼女は言います。

キャンプに住む男性は「映画?何が映画だ?我々の生活自体がまるで映画のようだ!」と言い放ちます。

この日キャンプでは『アメリカン・スナイパー』という映画が上映されていました。映画の中で銃撃戦が繰り広げられる中、すぐ近くで爆発の音が聞こえ――。

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“Dad’s Eyes”- ディアル・オマール

コバニから来た13歳のディアルは反政府勢力に住んでいたところを攻撃され、家は燃え、家族は火傷を負いました。それでも「幸運にも僕の火傷は酷くなく、元気だ」と言うディアル。

テントに帰ると包帯で全身を巻かれ、右目だけが見えている父親。同じように全身を巻かれた家族が寝ています。

メガネがなくなってしまい、よく見ることができない父親のためにディアルはメガネを探しにいきます。メガネをかけている人に少しの間でいいから貸してほしいとお願いするものの、「自分も必要だ」と断られてしまいますが・・・。

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“Sky and Medication”-デロヴァン・ケハ

13歳のデロヴァンの父親は病気ですがキャンプでは薬が不足しています。父親のために薬を探そうとしますが断られてしまいます。

配布所に行けば薬をもらえると聞き、向かうとそこには長い列がありました。キャンプにいる人々は、いつ来るか分からない薬の到着を待って空を見上げます。

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“Toward Home”-マフムド・アフマド

マフムドはコバニ出身の13歳です。彼の住んでいたところは爆撃をうけ、父親は村を守るために残りました。家を探しに行くと言い、彼は妹とともにコバニに戻ります。

 

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家の跡に妹の人形を見つけ、とりに行こうとするとそこには・・・。

 

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“Serenade of the Mountains”-ゾホール・サイド

8本の短編映画の最後となるこの作品はクルドの美しい景色を見ることができます。

クルド人のミュージシャンは美しい声を持つというゾホールという少女を探しにいきます。父親を亡くしてから歌うことができなくなってしまった彼女に、彼はシンジャールの歌を一緒に作ってほしいと説得を試み・・・。

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[RFFインターン山口さんの感想]

8人の若い映画監督たちが、苦境にさらされながらも勇敢に、力強く生きていこうとする様子をまるで自分の目で見ているかのように感じることができます。