【難民映画祭インターン:インタビュー】

【難民映画祭インターン:インタビュー】

第10回UNHCR難民映画祭のインターンとして一緒に映画祭を作りあげてくれた武正桂季さん(写真左)と増渕加奈さん(写真右)。2人は7月下旬からインターンを開始し、今年の難民映画祭を支えてくれました。インターン期間終了を前に、難民映画祭に参加した感想を思う存分語ってもらいました!

インターンをしてみようと思った理由、きっかけは何ですか?

(武正)インターンに応募した大きな理由としては、小学生の頃から漠然と国連で働くということに対して憧れがあり、その思いを少しでも実現させたかったからです。またルワンダに関する映画(『ホテル・ルワンダ』『ルワンダの涙』)を観たときの衝撃や、マケドニアを訪れた経験などから自分の中に国際協力への関心が芽生え、難民といった国際問題に対して何かしたいという思いが常にくすぶっていました。

自分のキャリアを考えたとき、イメージの中の国連だけでなく、実際に自分がどのように働けるのか、どんな貢献の仕方があるのかを理解したいと思い、就職活動中でしたが、応募しようと決意しました。大学時代に影響を受けた「映画」、そして自分の「国連で働く」という希望、この二つが重なったからこそ挑戦しようと思いました。

(増渕)もともと私は大学で経営を専攻しており、難民についての知識はほぼ持ち合わせておらず、映画祭にも参加したことはありませんでした。きっかけとなったのは、留学先のメルボルン大学で多国籍文化に関する授業で、オーストラリアのベトナム難民について研究したことです。また、留学した際に出会った友人の中に難民2世がいたり、ホームステイ先のすぐ近くにゲットーと呼ばれる難民の集落があったりと、普段の生活の中で関わることが多く、問題意識が自然と高まりました。そんな状況の中で、遠くかけ離れているように思える難民の存在を身近に感じる「きっかけ」となる貴重な体験を提供する、UNHCR駐日事務所の難民映画祭に携わりたいという思いが芽生えました。

どんな仕事を担当しましたか?

(武正)大きく分けて2つあります。映画祭までの準備、そして実際の映画祭での業務です。映画祭までの準備は多岐に渡ります。映画館や公共施設への映画祭のチラシ設置をお願いするための電話、チラシの梱包・発送作業、当日の備品の準備、会場ボランティアの募集、会場の人員配置、会場の案内図の作成など・・。

映画祭本番での業務は、会場設営、またボランティアの方と一緒にお客様を誘導することが主でした。映画祭当日に自分がやってきた準備が一つに繋がっていくプロセスをこの目で見られたこと、第一線で携われたことはとても楽しく、充実したものとなりました。

 

(写真:会場の下見で真剣にメモをとる2人)

(増渕)インターンに任される仕事は、細かく上げるときりがないほど多岐に渡ります。まずは映画祭に必要な資料の翻訳作業から始まりました。

映画祭準備期間中はチラシの配布、備品の発注と管理、招待客へのレター送付、メールでの対応、整理券の作成などをします。

映画祭期間中は、備品を梱包して会場へ送付し、会場設営、ボランティアの統率、ときには会場カメラマンまでこなします。

映画祭終了後は備品の片づけ、アンケートの集計、来場者数や会場募金の集計、webへの露出調査、来年に向けた報告書作りをします。今年始めた試みである大学パートナーズでの上映に直接赴き、レポートも作成しました。

また、インスタグラムキャンペーンやツイッターでの投稿など、広報の面でも企画の草案から実施まで行いました。映画祭に関する打ち合わせには基本的に参加し、頻繁に自身の見解を尋ねられます。これについてどう思うのか、どう改善できるか、質問や意見はいつでも歓迎されました。どんな質問に対してもプロジェクトマネージャーの今城さんが細かく丁寧に教えてくださったため、スムーズに仕事に取り組めました。

また相方インターンの武正さんと情報共有し、お互いにやるべき仕事を確認し合い、取りこぼしなく日々の業務を進めることが出来たと思います。

難民映画祭のインターンを経験した感想を教えてください

(増渕)大変だったのは映画祭当日の会場運営です。当日になって変更しなければならない事が多くあり、その場その場で映画祭アシスタントとしての判断を迫られました。

また満席御礼の回が多く、特に初回は満席のために70名以上のお客さんを客席にご案内することが出来ませんでした。中には遠方からいらっしゃった方もいて、難民問題の関心の高まりを感じるとともに、非常に心苦しかったです。

嬉しかったことはインスタグラムキャンペーンの立案など、新しい試みに取り組ませてもらったことです。また、ボランティアの方に「来年も必ず参加します」と言って頂いたり、来場者の方に「ありがとう」と声をかけて頂いた事も、これまでの準備がやっと形になったのだと実感することが出来て、嬉しかったです。

 

(写真:受付で入場整理券を配布する増渕さん)

(武正)一番嬉しかったことは、インターンで企画したインスタグラムのパネルを会場に来た人たちが楽しそうに使っていた現場を目にしたときです。インスタグラムのキャンペーンも、パネル作りも最初から企画に参加しただけに嬉しかったです。実際にSNSで色々な人が写真をアップしているのを見て、映画祭チームで取り組んだ企画が形になっていることを知り、少しでもこのイベントに貢献できたのかなと認識することができました。

それと同時に自分の中で感じたことは、人を動かすことの難しさと自分の無力さです。難民の現状、UNHCRの活動に対する啓蒙活動の一環として行われる難民映画祭。会場に来て下さった人に何かを感じて頂き、行動を起こしてもらうこと。それがゴールだと思いました。
それを考えると、自分が取り組んだ会場準備や運営は円滑であることが最低条件だと気づきました。それにプラスして「どのように広報活動に取り組み、このイベントの認知度を高めていくか」そして「実際に来てくれた方々に、有益かつ心に響くメッセージを伝え、イベント後も情報を発信し続ける」といった事の重要性に気付かされました。また職員の方々の働く姿を身近で見ながら、自分が1つ1つの業務に中途半端な力しか有していないこと、貢献できないことに無力さを感じました。

しかし同時に、どのようなスキルや経験が必要なのかに気付けたことは人生の財産だとも感じています。今後のキャリアを考える上で、優先順位付けを具体的にできるようになりました。これまで漠然としていた国連職員へのイメージが明確となり、小学生の時から夢だったものが現実なものとして認識できるようになりました。このインターンとしての経験は、自分の人生において大きなターニングポイントとなりました。

(写真:会場入り口でお客さんを誘導する武正さん)

映画祭のインターンをしてみたいと迷っている人へメッセージをお願いします!

(増渕)UNHCR駐日事務所が開催するイベントの中でもこれほどの規模で行われるのは「難民映画祭」だけです。映画祭本番ではお客さんの反応を肌で感じることが出来、大変やりがいのあるインターンだと思います。また映画祭を通して、様々なバックグラウンドを持つ方々との出会いに恵まれ、お話しを伺う中で自分の将来設計の指針を築くことが出来ました。まだ自分が人生を通して何をやりたいのか決めかねている方にはぜひチャレンジしていただきたいです。

(武正)難民映画祭におけるインターンは、UNHCR内の仕事だけでなく、企業や大学、一般の方々とどのように繋がっているのかを知り、参加することができます。だからこそ、多岐に渡る業務があり、その1つ1つにゴールが無いと感じました。様々な機関の人々と協働するからこそ「国連や国際機関で働く」ということに関して、一番リアルに感じられるインターンだと認識しています。さらに、様々な人たちと積み重ねてきた業務が映画祭当日にすべて繋がるという経験は、他の場では味わうことができないと思います。難民、映画、UNHCR、国連、1つでも興味のあるキーワードがあれば、挑戦していただきたいです。

 

Photo:UNHCR