ゲストトーク:『ホープ』JICA飯村学さん

ゲストトーク:『ホープ』JICA飯村学さん

10月3日『ホープ』の上映後にトークゲストとして国際協力機構(JICA)アフリカ部の飯村学さんが登壇されました。まず『ホープ』という作品への理解をより深めるために、ストーリーを振り返りながら背景説明をしてくださいました。映画の主演、ホープとレオナールや、劇中に登場するゲットーのチェアマンなど、実は本当にその体験を持つ人が演じていたのだそうです。この映画のリアリティはそんなところから出てきているのかもしれません。

続いて主人公が、モロッコ領に隣接するスペイン領メリリャにたどり着くまでのルートについて地図で解説。気候の厳しいサハラ砂漠を縦断する過酷な旅。通過する町々では、出身国の国籍ごとにしきられた縄張りの不条理に打ちひしがれたのでした。

そもそもアフリカからヨーロッパへの移民の流れは今に始まった話ではなく、これまでも長く続いてきたそうです。ヨーロッパとアフリカの経済格差、貧困、限られた就業や教育機会・・。そういった根本的な問題が、多くの移民を生んできた現実を、西アフリカのセネガルを例に解説されました。

しかしこの地域の状況に変化があったのが2010年ころ。それまで貧しい中でも人々は水や食べ物を分け合いのんびりと暮らす、そんな平和があったサヘル地域。しかしイスラム過激派組織の侵入、リビアの体制崩壊、マリ内戦、ナイジェリアにおけるボコハラムの活動の活発化など、地域の治安情勢が急激に悪化していきます。主演のホープはナイジェリア、レオナールはカメルーン北部の出身。二人はまさにこのような時代背景の中で、ヨーロッパへの密航を決意したのでした。

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上映後、重苦しかった会場も、飯村さんの軽妙なトークのおかげで一気に明るい雰囲気に・・!最後まで真剣に話に耳を傾け、頷きながら聴く方が多く見受けられました。10月25日(日)には札幌でも『ホープ』上映&トークが予定されています。

©UNHCR
プロフィール 飯村 学(いいむら つとむ)
国際協力機構(JICA)アフリカ部参事役。専門分野はフランス語圏アフリカ。特に政情・治安・セキュリティ問題、平和構築支援など。海外駐在は、セネガル共和国、コンゴ民主共和国。仕事のかたわら、「ンボテ☆飯村」の名前で、映画、トークなどアフリカに関するプロモーション活動を展開。主な執筆に「コンゴにまつわるエトセトラ」(『Dodo』2013年5月号)、「マリ そこにある危機~砂漠の祭典よ、再び」(『ARDEC』2014年12月)、「サヘル・サハラ危機情勢と今後の見通し」(『国際開発研究者協会ジャーナル』2013年8月)、「開発の現場から見たマリ、サヘル情勢」(『サハラ地域におけるイスラーム急進派の活動と資源紛争の研究』、日本国際問題研究所、2014年3月)、『グローバルキャリア教育』(共著、ナカニシヤ出版、2012年3月)、「アフリカの平和に生きるサッカーのチカラ」(『現代スポーツ評論』、2014年11月号、創文企画)など。元自衛官(高射ミサイル部隊)、防衛大学校卒。個人ブログ『ぶらぶら★アフリック』https://blog.goo.ne.jp/nbote