ゲストトーク:『グッド・ライ』ゲール・ドゥエイニーUNHCR親善大使
第10回UNHCR難民映画祭のオープニングをかざった作品は『グッド・ライ~いちばん優しい嘘~』。この作品に出演した俳優/モデルのゲール・ドゥエイニーUNHCR親善大使が上映後のトークゲストとして登壇しました。
―今年6月にUNHCRの親善大使になりました。どのような思いで活動していますか?
ゲール:UNHCRとは幼い頃から関わりがありました。現在は、東アフリカとアフリカの角地域を担当するUNHCRの親善大使ですが、特に子どもたちの教育の大切さを伝えて行きたいと考えています。ケニアやエチオピアに行くたびに、若い人の教育の重要性をいつも感じていました。私自身、幼少期、教育を受ける機会が無かったんです。
―映画『グッド・ライ』出演への思いをお聞かせください
ゲール:この作品は南スーダンでの紛争が背景となっていますが、これは私が7~8歳頃に体験したことでもあります。自分だけでなく、マメールを演じたアーノルド・オーチェンはウガンダ出身の母、南スーダン出身の父のもと生まれましたが、父親を殺されたという辛い経験をしています。
この作品には、子どもたちが襲撃を受け、逃げ惑うシーンが出てきますね。実はあのシーンに出演している子どもたちは、米国へと第三国定住した元難民の親を持つ子どもたちなんです。この作品への出演を通して、母語を学び、親が実際に体験したであろうことを自ら演じることによって学んだんです。
私が最初にこの役について監督と話したとき、様々な意味でとても難しい役だと言われました。けれど、自分にとっては単に役を演じる以上の体験でした。自分自身が南スーダン出身であることや、敬虔なキリスト教のコミュニティで育ったことなど、役との共通点をどのように演技に活かすかをよく考えました。
―この映画は撮影までに長い時間をかけて準備されたと伺っています
ゲール:そうなんです。構想に10年、オーディションに2年かかっています。とても丁寧に準備された作品です。
©UNHCR
―現在の難民の置かれた状況についてどのように感じていますか?
ゲール:世界の難民を取り巻く状況は深刻で、まずは皆がそれを知ることが大事です。難民問題は皆が理解しようと努力し、解決策を見出さなければなりません。何の非もないのに自国で迫害され、苦しむ人が多くいます。人道という観点から言って、まさに世界は今逆行していると感じます。
―日本に対して望む事はなんでしょうか?
ゲール:まずは日本の皆さんに「ありがとう」と言いたいです。私は今年6月にケニアのカクマ難民キャンプを訪れましたが、そこには日本からの支援で建てられた学校があったんです。そこでは8000人の生徒が学んでいて、皆がその場所のことを「ジャパン」と呼んでいました。自分は10月に日本に行くんだよと伝えると、「勉強する機会をくれてありがとうと伝えて」と言われました。
初めて日本に来て、多くの人と会って話す機会がありました。いつも「我々日本人には何が出来ますか?」と聞かれます。でも、日本は既に多くのことをしていると感じます。ただ、世界の現状が「これで充分」とは言えないほど深刻なのです。
私は今回、日本にこれをして欲しいとお願いをしに来たわけではなく、自分の体験や思いを伝えるために来ました。明日も生きられるという選択肢を持つ日本の皆さんにはどうか、難民の置かれた状況を理解し、何が出来るのかそれぞれに考えて頂けたらと思うのです。
(写真:「ジャパン」と呼ばれている学校の前で笑顔のゲールと生徒たち) ©UNHCR/Dominic Nahr
―最後に会場の皆さんにメッセージをお願いします
ゲール:映画を観てくれてどうもありがとう。今日観て感じたことを、家族や友人に伝えてください。今日は自分の思いを皆さんに伝えられて嬉しかったです。ありがとうございました!
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<ゲール・ドゥエイニー プロフィール>
俳優/モデルでUNHCRの親善大使(東アフリカ・アフリカの角地域)。映画『グッド・ライ~いちばん優しい嘘~』では主人公の一人、ジェレマイア役として出演。1978年、スーダン南部(現在の南スーダン)で生まれ、内戦のさなか家族と離ればなれになり、強制的に少年兵として徴兵される。14歳でエチオピアの難民キャンプへと逃れ、その後第三国定住で米国へ移住し、米国の大学を卒業した。2015年にはUNHCRの親善大使(東アフリカ・アフリカの角地域)に任命され、難民の声を世界に届ける活動を精力的に行っている。