ゲストトーク『目を閉じれば、いつもそこに』:藤井沙織監督、ジャワードさん(仮名)
10月3日『目を閉じれば、いつもそこに ~故郷・私が愛したシリア~』上映後、藤井沙織監督と、この作品に出演したジャワードさんがトークゲストとして登壇されました。
―この映画をとろうと思ったきっかけを教えてください
(藤井監督)私はこれまで「戦争と平和」に関わる映像制作に携ってきました。ある時シリアのことを知り、シリアのために何かしたいと思ったんです。ちょうどその頃シリア支援団体サダーカ(URL)の方と出会い、その活動に同行してシリア難民の家庭を訪問する機会を得ました。多くの苦労や辛い経験をしているシリアの人々の家族を思うあたたかい気持ちに触れ「映像を通してシリアの人々の声を日本に届けたい」と思うようになったんです。
―映像を観ていると、シリアが紛争前はいかに美しい国であり、人々がシリアをいかに愛しているかという思いが伝わってきます。シリアはこの紛争が始まる前までは、大変多くの難民を受け入れる国でもありました。実際にヨルダンに避難しているシリア難民と接してみてどのように感じましたか?
(藤井監督)シリアから逃れ、ヨルダンへと避難してからが本当に大変なのだと感じました。ヨルダンに一度逃れても、様々な理由から戦火のシリアへと戻った人も多くいます。もうその人達とは会えるかどうかわかりません。
(写真右:藤井沙織監督 写真左:モデレーターを務めた小尾尚子UNHCR駐日事務所副代表)
―藤井監督が作品を通して伝えたかったメッセージは何ですか?
(藤井監督)シリアでの出来事を遠い国のことと思っている人もいるかもしれません。でもこの作品がシリアのことを自分のこととして考えるきっかけになればと思ったんです。そしてそれがシリアでの紛争を止める何かになればと。また「故郷を愛する」という誰もが持つ共通の思いも伝えたいとおもいました。
ーここからはこの作品に出演されていたジャワードさんにお聞きします。日本に来てからどのくらい経ちますか?
(ジャワードさん)2年です。
―映画に出演するのを決意されたのはなぜですか?
日本に来てからシリア人を助けることを何かしようとずっと思っていました。シリアの人々は苦しんでいます。だからこの映画を通してその声を届けられたらと思いました。
―故郷、シリアに対する思いをお聞かせ下さい
シリアからの難民は日に日に増えています。状況は悪化する一方です。友人や親戚がトルコやヨルダンなどへと逃れました。とにかく紛争が終わって、早く家に帰りたい。本当に多くの人が亡くなりました。これ以上命を落とす人が出る前に紛争を止め、皆がシリアに帰れたらと願います。
―日本に来てからの生活はいかがですか?
日本は大好きです。シリアからヨルダンへと逃れ、難民キャンプで避難生活を送っていた頃は辛かったです。日本は安全で平和で、とてもきれいな国です。
―私たちに今出来ることは何でしょうか
(藤井監督)まずは今日この映画をご覧になって自分が思ったこと、感じたことをぜひ発信して頂きたいと思います。私のシリア人の友人の1人が言っていました。「朝仕事に出かけるとき、必ず空を見上げるんだ」私がその理由をきくと「迫撃砲が落ちてこないようにね」と答えました。そういう人々に思いを寄せて欲しいです。他人事ではないんです。
(ジャワードさん)シリアの人々はとても苦しんでいます。もう武器はいりません。国に帰れるための手助けをして欲しいです。私はいつかシリアに帰れる日が来ることを望んでいます。
Photo:UNHCR
■藤井監督、プロデューサーの佐藤さんと田村さんからのメッセージはこちら
■サダーカSadaqa(シリア支援団体)のウェブサイトはこちら
プロフィール/藤井沙織監督
1984年生まれ、広島出身。 20代のときバックパックを背負い数十カ国を旅する。25歳の時訪れたチベットで同年代の女性の「もっと私たちのことを日本人に知ってほしい」という一言 がきっかけで「伝える」ことを仕事にしようと番組制作会社へ入社。戦争関連報道に携わる中、戦争と平和についての本質に迫りたいと考えるようになる。 2013年、フリーとなり国内の戦争体験者の声を伝える活動を続けるとともに、シリアの紛争にも関心を持ち、ヨルダンと日本を往復しながらシリア人の声を 届け続ける。