【作品紹介⑥】トランキランディア
トランキランディア―穏やかな時間が流れる豊かな土地。
農民たちは愛情をこめ作物を育て、つつましく不自由のない暮らしをしていました。
その土地で生まれ、その土地で一生を終える―。それがささやかな願い。
しかし、ある日から鳥のさえずりは銃声の音に変わりました。
コロンビア革命軍(FARC)と政府軍の抗争がはじまり、トランキランディアの農民はなすすべもなく、政府軍からもFARCからも理不尽な言いがかりをつけられては攻撃を受け、残忍な仕打ちを受ける日々が始まったのです
土地は略奪され、愛する家族は理由も無く殺されました。
ひとり、ふたりと行方が分からなくなる…
巻き込まれたかのように思われた農民たちは、いつしか自分たちが標的にされていることに気付きました。
政府は農民への攻撃を続け、しまいには土地を取り上げ大規模な農業改革を強行したのです。
大事に耕してきた農地から追いやられ、長年はぐくんできた農業文化はとりあげられてしまいました。
10年以上続く暴力に農民は疲弊し、行き場をなくした彼らは慣れない町での生活を強いられ、愛する故郷へ戻る日を待ちわびています。
トランキランディアの住民は発言することもできなければ、訴えることもできません
ただ、耐え、声を潜めることで自分たちの身を守ってきました。
殺人、誘拐、強奪…数え切れないほどの罪は罰せられることなく闇に葬り去られます。
まるで存在しないかのように世間から見捨てられた土地、トランキランディア。
いつか帰る日を夢見て、その声は今、静かに、そして穏やかに真実を語ります―。
トランキランディア-穏やかなる土地
ジョエル・スタングル監督作品
コロンビア / 2014年 / 56分 / ドキュメンタリー
日本初上映