【作品紹介③】ボクシング・フォー・フリーダム
運命に立ち向かうため、サダフはアフガニスタンで一番のボクサーになった
決して設備が整っているとは言えない、埃っぽいボクシングジムで熱心にトレーニングをする1人の女子ボクサー。
彼女の名前はサダフ・ラヒミ。アフガニスタン初で唯一の女子ボクシングチームに所属する最も優秀なボクサーです。
その鋭い目線の先にあるのは2012年開催のロンドン・オリンピック。
強化選手として選ばれたサダフは練習漬けの毎日を送っていました。
しかし彼女に向けられたのは、社会の冷たい目でした。
伝統的に女性の社会的地位が低いアフガニスタンでは女子ボクシングなんて論外。ましてやオリンピックへの出場なんて言語道断です。
14歳になったら学校をやめて結婚して家庭を守る。それが世間がサダフに求める姿です。
浴びせられる暴言、鳴り続ける脅迫電話。身内にも非難され、一人で外出するのも難しくなってしまいました。
「自分の人生を制限されたくない」
そう強く願ったサダフは、14歳のときに結婚をきっぱりと断り、サダフは家族の協力のもと、新しいアフガニスタン人女性の生き方としてボクシングと学業を両立させる道を選びます。
撮影クルーがサダフに出会ったのは、2011年のことでした。
幼いころ家族とともにイランに逃れ、9年間避難生活を送っていたサダフはそこでボクシングに出会いました。帰郷してから間もなく、サダフは両親に黙ってボクシングチームに参加しました。
撮影はサダフが17歳のときに始まり、4年かけて行われました。その間、数々の困難に立ち向かいながらも、サダフは同世代の女性たちに向けて新しいアフガニスタン人女性の生き方を訴える役割を担うことになります。