【作品紹介④】目を閉じれば、いつもそこに

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【作品紹介④】目を閉じれば、いつもそこに

「シリア、僕の国の名前を聞いてあなたは何を想像しましたか?」

紛争により国外へ逃れた難民400万人以上、国内で避難を余儀なくされた人は760万人にのぼります。*

終わりの見えない紛争は5年目に突入しました。

空爆、逃げ惑う人々、瓦礫と化した街…それが私たちが報道で目にするシリア…

それでも、溢れんばかりの笑顔でふるさとの思い出を語る少女の瞳にはかつて美しかったシリアの風景がしっかりと映っています。

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「シリアに帰りたいわ。自分の故郷に勝る国はないもの。」

美しく豊かなふるさと「シリア」の記憶を胸に、先の見えない避難生活に耐え続けるシリア難民の家族。

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そんな彼らのもとに足しげく通う1人の日本人がいます。

ヨルダン在住の田村雅文さん。ヨルダンで働く傍ら、休みの週末を利用し、シリアからヨルダンに逃れてきた何百件ものシリア難民のお宅を訪問し、彼らの声を日本に届けています。

平和だったころのシリアで海外青年協力隊員として2年間滞在していた田村さんはシリアという国とその温かい人々に魅了され、シリアの人々のために何かしたい、と「サダーカ」という団体を立ち上げました。

紛争の終結がなければ、シリアの人々が安心してふるさとに帰れる日は来ません。

シリアの平和を願い、田村さんは今日も活動を続けています。

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「こんなことになるなんて」

かつて平和だったシリア。今では国民の半数以上が家を追われ、避難生活を余儀なくされています。

そして帰る場所をなくしたシリア人は世界中に散らばっています。

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その一人のラドワンさんは現在、東京で暮らしています。

 

幸せだったあのころ―。家族で食事を囲む時間、木陰に座ってお茶を飲む時間。

そんなささいな日常がなによりも大切だった。

しかし、紛争で家族は引き裂かれ、今は遠い異国の地でいつか再会できる日を願い続けるしかありません。

「シリアは昔は平和だったけど、平和が何か失うまで分からなかった」

「日本がずっと平和であってほしいよ」

穏やかな顔でそう語るラドワンさんの言葉が胸に突き刺さります。

監督の藤井沙織さんはテレビ番組などの映像制作の仕事で戦争と平和に関するドキュメンタリー制作に関わったことがきっかけで、平和のために映像ができることを考えるようになりました。

2011年、シリア紛争勃発。何かしたい、と思っていたところシリア難民を支援する団体「サダーカ」と出会い、ヨルダン在住でサダーカ代表の田村さんを訪ねることに。

サダーカの活動に同行し、シリア難民の家庭を訪問し、人々の声に直接耳を傾けていくうちに「映像を使ってシリアの人々の声を日本に届けたい」と思うようになります。

平和だったころのシリアを知る数少ない日本人としてその美しさ、人々のあたたかさを伝えたい。ニュースで報じられない、そこで生きる人々の声を届けたい―。

サダーカ代表の田村さんと同じく、シリアでの勤務経験がある佐藤友紀さんなど、同じ思いを抱くメンバーが有志で集まりドキュメンタリー制作がはじまりました。

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(写真:左から佐藤友紀さん、藤井沙織さん、田村雅文さん© UNHCR)

 

地理的にも文化的にも遠い存在のシリアは日本人にとって親しみがあまりないかもしれません。

でもふるさとを思う気持ちはきっと誰にでもあります。

ふるさとを奪われたシリアの人々の思いを受け止め、あなたは何を思いますか?

 

* シリア難民、国内避難民の数字について詳しくはこちら:

http://data.unhcr.org/syrianrefugees/regional.php

http://www.unocha.org/syria

目を閉じれば、いつもそこに ~故郷(ふるさと)・私が愛したシリア~

藤井沙織監督
日本 / 2015 / 57分 / ドキュメンタリー
日本初上映