映画紹介『セバスチャン・サルガド / 地球へのラブレター』
セバスチャン・サルガドの作品に感銘をうけたヴィム・ヴェンダース監督とサルガドの長男、ジュリアーノ・サルガドとの共同監督によるドキュメンタリー映画です。
「フォトグラファー」とはもともと「光で描く人」を意味すると語るサルガド。写真を撮る人の生まれ育った環境が違うからこそ写真も一枚一枚違うと言います。
ブラジル出身で7人の姉妹に囲まれて育ったサルガド。「アザー・アメリカ」という写真集のために中南米を横断します。その後ブラジルの金鉱や、アフリカのサヘル地域の飢饉、大量殺戮が行なわれたルワンダの様子などを写真に収めます。
エチオピアの難民キャンプの写真からは人々の苦しみがありありと伝わってきます。そして旧ユーゴスラビアのクライナから逃れた人たちを撮る中で「暴力が一般化」するのを目の当たりにしたサルガド。苦しみの中で生きる人々に寄り添い、見捨てられた人々に光を当てようとしました。
しかし「闇の核心」を目の当たりにしたサルガドは精神的に限界に達してしまいました。
そして体調の悪化した父親を看病するために祖国、ブラジルに戻りました。しかし、そこに待っていたのは荒れ果てた故郷。干ばつの被害で雄大な森も動物も消え失せてしまっていたのです。
そこで「森を作り直そう」と提案する妻。そこからサルガドは新しいテーマで写真を撮り始めます。「地球へのオマージュ」であると語る彼はそれらの写真を通じて何を伝えようとしているのか—。
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[RFFインターン山口さんの感想]
様々な報道写真を撮り続けるサルガドは立場の弱い人々の姿に光を当てようとしました。「何度もカメラを置いて泣いた」と言うサルガドが撮る写真から伝わる圧倒的な影響力に心を打たれます。
Photo: © Donata Wenders