作品紹介『ストーム・ストーリーズ ~戦禍を逃れた子どもたち』

作品紹介『ストーム・ストーリーズ ~戦禍を逃れた子どもたち』

オーストラリアのある中学校では「ツリーオブライフ」というプログラムが実施されています。このプログラムは、なぜ自分たちは難民になったのかという自らの体験を子どもたち自身が演じることで傷ついた心を癒すためのものです。

紛争により避難を余儀なくされた十代の若者たちが、オーストラリアのシドニーで新しい生活を始めています。オーストラリアに到着したということは、危険な避難の道のりの終わりを意味する一方で、心に傷を抱えながら新しい社会に順応しなければならない葛藤の日々の始まりでもあります

この学校の校長先生は言います。「自身のルーツを心に刻み、わずかな荷物だけを抱えて家族と共に、文化も言語も違う国へ行くのは容易ではありません。彼らはまず学校の環境の中でこの場所は安全だということを知らなければなりません。そしてその次のステップは信頼関係を築くことです。こうした基礎がないと教育を始めることはできないのです」

13歳のアスファーもプログラムに参加する一人です。彼女はオーストラリアに来てから、自分が通っていたイラクの学校が爆破されたという知らせを受けました。そしてその爆撃によって彼女は多くの友達を失いました。アスファーはイラクに戻りたくないと言います。「私の大好きな人に何が起きたのかを思い出したくないから」

別の生徒も「昔は自分の話をすることが恐かった。でも今は違う。みんな自分が経験したことを知ってほしいと思う」と言います。

生徒たちは自分たちの過去を物語として自ら演じることで、過去と向き合うことができるのです。

生徒たちは練習を重ね本番に備えます。しかし脚本を作るにあたり、自分たちの話をしなければならないので、辛い過程でもあります。

発表前日になっても生徒たちは台詞を覚えきれていなかったり、初めてのステージに立つということに緊張しています。

「映画だったら撮りなおしができるけど、舞台だと一回きりなんだ」と。

そして本番当日—

生徒たちは自分たちの物語を伝えるため、ステージに立ちます。

[RFFインターン山口さんの感想]
プログラムに参加する生徒たちがそれぞれ自分たちの過去に向き合い、成長していく様子を見ることができました。さまざまな苦難を乗り越えてきた彼らにしか伝えることのできないストーリーがあり、周囲の人たちに支えられながら新しい一歩を踏み出す姿に勇気付けられます。