札幌上映トークイベント「難民支援の現場って? 国連職員に聞いてみよう!」レポート

札幌上映トークイベント「難民支援の現場って? 国連職員に聞いてみよう!」レポート

9月30日(日)、札幌会場での『君たちを忘れない 〜チョン・ウソンのイラクレポート〜』&『ソフラ 〜夢をキッチンカーにのせて〜』の上映後、トークイベント「難民支援の現場って? 国連職員に聞いてみよう!」が開催されました。

スピーカー:UNHCR駐日事務所渉外担当官 古本秀彦
質問者:北海学園大学4年 木下直哉、北海道大学3年 森本衣美、北海道大学2年 依田恵
ファシリテーター:国連UNHCR協会 山下 芳香

古本職員はUNHCR職員として、イラン、イエメンの2か国に赴任後、現在はUNHCR駐日事務所で渉外担当として勤務しています。はじめに、難民支援の現場で経験してきた仕事の話や、滞在した国の状況等をお話しました。

【イランでの仕事】
イランは隣国アフガニスタンから約100万人の難民を受け入れている国です。
私の主な仕事は、水、衛生、保健、教育等、様々な公的サービスを難民へ届けるための調整、予算措置をし、現地の団体と共に支援を実施するという仕事でした。
また、壊れかけたシェルター改修の為の事業、食料、毛布、マット、キッチンツールなどの生活必需品の配布のモニタリングなどもしていました。
難民は難民キャンプで生活していると想像される方も多いと思いますが、世界を見ても、キャンプに住んでいる難民の割合は実は少なく、都市部でアパートを借り、避難生活を送る人々の方が多いです。UNHCRとしても、キャンプではなく、都市部での生活を推奨しています。その理由について、皆さんにも考えていただきたいのですが、例えば地震などがあり、自分の家に住めなくなった場合、避難所で5年、10年生活したいと思いますか?避難している人々も、キャンプという閉じられた世界ではなく、プライバシーや人権に配慮された、都市部での生活を送ることが重要です。キャンプ内での生活では、自立心が失われていくという課題もあります。イランでは、政府と共に職業訓練の実施も手がけました。UNHCRは難民が最終的に自立した生活を送るための支援に力をいれています。

【イエメンでの仕事】
イエメンはアラビア半島、サウジアラビアの左下にある国で、多くのソマリア難民が海を渡ってたどり着きました。また国内紛争も同時に勃発しており、今日、世界最悪の人道危機が起こっている国とも言われています。厳しい気候のため、支援物資であるテントは2、3か月ごとに張り替えないと、破れたり穴が空いたりします。また、保護が必要な人々、特に脆弱な状態にある女性や子どもを速やかに特定し、守る支援が必要となります。UNHCRという組織は国際機関なので、多国籍な人々と仕事をすることになります。イエメンでのチームでは、15か国程度の国籍の人達と共に仕事をしていました。緊急時には一致団結して、速やかに行動する必要があります。とてもやりがいのある仕事でしたが、一方で、生活するには厳しい環境でもありました。イエメンでの治安がどんどん悪くなっていく中、アパートか職場か、その間を移動する防弾車、その3つしか生活の場所がないということも経験しました。国連職員で危険な任地にいる場合、どの国でもこのような生活環境に触れることがあります。
イエメン赴任中、南部でアルカイダと政府の紛争が終わった時期がありました。人々が一気に、大量に故郷へ戻りはじめました。12月の年末であり、予算がなかなか動かない時期でしたが、本部と交渉し、ケニアのナイロビから物資を積んでイエメンまで届ける手配をしました。ようやく届いたのが、12月24日のクリスマスイブで、大変印象深い仕事の一つです。イエメンでは養蜂が盛んですが、ようやく故郷に帰ることができた男性が、はちみつが採れるようになったと見せてくれました。帰還して、生活が再建できるところまでの支援に関われたことは、イエメンでの仕事の醍醐味でした。

【大学生からの質問】
木下:古本さんはどうして、紛争や難民に関わろうと思ったのですか?
古本:たまたまなんですが、大学時代に海外ボランティアを探しており、その時に見つけた、クロアチアの難民キャンプのボランティアに参加したことがきっかけです。1か月難民と生活して、難民の悲惨さよりも、強さ、自分の状況を笑い飛ばすような、心の強さに触れることができ、難民問題により取り組んでみたいと思いました。

木下:現在は具体的にどのような仕事をしていますか?
古本:現在は現場の仕事とは種類が違っています。主には、日本政府との窓口として、資金調達の仕事や政府への提案書をまとめたりしています。

森本:国連職員や海外で働きたいと思ったら、どのようなことを頑張ればいいでしょうか?
古本:「何でもいいからとにかく頑張って」ということです。国連機関は、とにかく色々な仕事が必要になります。例えば、法律の知識、IT技術、保健、語学のプロ等々、必ずしもこの勉強をすれば大丈夫とか、こんなことを頑張れ、というわけではないのです。自分が興味のあることをとにかく突き詰めていく、ということがとても大事だと思います。その上で少なくとも、国連公用語の1つで仕事ができることは必要です。私は英語しかできませんが、今、フランス語の習得を目指して勉強しています。皆さんにアドバイスできるのは、語学は早いうちにやっておいた方がいいです。若い頃の方が覚えやすいですから。

依田:私達のような、学生ができる支援とはどんなことでしょうか?また、どのようなことを期待されますか?
古本:映画祭のボランティアも非常に重要な支援だと思います。また、難民問題に触れて、感じたことを、少しでも多くの人に話してもらうことが、最大の支援だと思います。その中で、好意的なことだけではなく、批判的なことを言う人もいると思います。例えば、難民に対して支援をする必要がないとか、難民が来ると治安が悪くなるとか。そうした否定的な意見でもいいから、周りの方と話をしていただきたいです。大学生としてやってもらいたいのは、授業なども利用して、色々な意見を理解すること、短絡的な偏った意見、物事のみを理解するのではなく、様々な見方があることを理解してほしいです。その結果、難民問題に対して否定的な見解であればそれでよいし、難民をサポートしたい、という意見であれば、それも嬉しいことだと思います。