国連UNHCR難民映画祭2017

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難民映画祭プログラム ディレクターが語る ここが見どころ『国連UNHCR難民映画祭2017』

2017年08月23日

新着情報

映画祭プログラムに掲載しました<ここが見どころ『国連UNHCR難民映画祭2017』>を、スペースの関係上、プログラムでは紹介しきれなかった裏話も加えたWeb限定ロングバージョンで公開します。

プログラムPDF版はこちら

『難民映画祭』に関心を寄せていただき、ありがとうございます。2006年から日本で始まった『難民映画祭』も2017年で第12回を迎えることになりました。『難民映画祭』は、難民という状態に置かれている人間一人ひとりを描く映画を日本の皆さまにご紹介することによって「難民」という集合体ではなく、難民という状態に置かれている一人ひとりの異なるストーリーを、映画を通じてお伝えしたい、という意義で開催されています。

難民の中には、靴屋さんだったり、サラリーマンだったり、主婦だったり、歌手だったり、あるいは将来を夢見る子どもだったりといった普通の様々な人がいて、その一人ひとりのストーリーを見ることにより共感が生まれる。自分が難民だったらと無理に置き換える必要はないと思うのです。ストーリーから生まれる共感、そしてそこから理解が生まれるのだと思います。

『難民映画祭』のために映画を選ぶとき、いつも3つの基準を設けています。1つ目は偏りすぎない目線の作品であること。ドキュメンタリーでもドラマでも、必ずどちらかの側の目線に立ったものになるのは避けられない。しかし偏りすぎない目線を持った作品を選ぶようにしています。

2つ目は多くの人に受け入れられる作品であること。映画祭という開かれた場であり、特定のオーディエンスを想定したような作品ではなく、色々な人に観ていただいて面白いと思っていただける作品を選んでいます。3つ目は批評的な観点からも高く評価できるクォリティを持った作品であること。監督や製作者たちの強い意志が反映されたユニークな作品、それが批評的な観点からも高く評価できる作品。興行収入が高い作品というのは2つ目にあげたような多くの人に受け入れられる作品だと思うのですが、3つ目にあげたクォリティが高い作品というのはその時代や国とかを超えて普遍性がある。その3つのバランスを考えながら作品を選んでいます。また、全体をイメージして映画祭全体としての作品のバランスもとっています。難民問題の中でも子どもの問題や女性の問題など、いくつか重要なトピックがありますので、そういったものを広くとり入れていくとか。あるいは難民問題を正面から扱った作品ばかりにしない、など。切り口は様々ですので、もし可能なら皆様にはなるべく1作品だけでなく、複数の作品を見てほしいと思っています。

毎年映画祭の4~5か月前には候補作品を洗い出し、可能性がある作品は1本1本、全力で日本側のスタッフに紹介します。そして一人でも誰かが「これはぜひ上映するべきだ」と思ってくれるように努力します。まずは日本側スタッフの目に適うかどうか。これが日本の観客に受けいれられるかどうかの最初の試金石になるので、日本側スタッフのコンセンサスをとる作業は一番大変だけれど、大切なプロセスとして毎回時間をかけて行っています。主催者が納得しない作品はお客様も納得できないですよね。

今年は紛争の状況を最前線から発信する形のドキュメンタリー作品が増えました。以前はプロの戦場カメラマンやテレビ局などによって作られていたものが、今は紛争国の一市民である当事者が自分たちで撮影し、クォリティ高い編集を行うことにより、世界の映画祭でも高く評価されるような作品が生まれる時代になりました。またヨーロッパが舞台の「受入国側の目線」で難民問題をとらえようという作品も増えています。

最近のニュースにリンクした作品は、難民の子どもたちが主人公のドキュメンタリー『シリアに生まれて※作品情報はこちら)』。じっくり見ていただきたい1本です。一方、日本であまり報道されていない難民問題を扱う作品としては『ナイス・ピープル※作品情報はこちら)』や『とらわれて ~閉じ込められたダダーブの難民~※作品情報はこちら)』。どちらもソマリア難民の話です。ソマリアの難民問題は長期化し、メディアも国際社会も疲弊していますが、そこにはまだ難民はいるのです。とくに『ナイス・ピープル※作品情報はこちら)』は難民問題にあまりなじみのない方にもオススメです。ソマリア難民の青年たちがスウェーデンに難民として逃れて、バンディという氷上スポーツに挑戦する感動ドキュメンタリーです。

音楽好きにオススメは音楽ドキュメンタリー『神は眠るが、我は歌う※作品情報はこちら)』。ラップあり普通の演奏あり、というイラン人ミュージシャンの話で演奏シーンが印象的です。

一人の人生を通して難民問題を考えるじっくり派にオススメは『市民※作品情報はこちら)』。アフリカからハンガリーに移住してきた難民男性を主人公に意外な人間ドラマが展開されます。

個人的に特に印象的だった作品は、ホワイト・ヘルメット(※)のドキュメンタリー『アレッポ 最後の男たち※作品情報はこちら)』。それぞれの仕事を持ち、家では普通のお父さんだった彼らが国内避難民になり、ものすごい状況で命を削って家族を守り、その中でもなんとか人生を味わって生きていこうとするさまに心を鷲掴みにされました。

『難民映画祭』を開催すると、毎回ツイッターやアンケート、あるいは会場などで温かいお言葉をいただきます。それが私たち開催側の大きな励みになっています。やっていてよかったなと心から思います。今年の『難民映画祭』は、東京・札幌・名古屋・大阪・福岡を経て、広島で閉幕予定です。平和都市、広島で終えるというのはやはり特別な意義があると感じています。様々な作品がありますので、ぜひお気軽に足をお運びいただければ幸いです。そして作品をご覧になった後、何らかのアクションにつなげていただければこんなに嬉しいことはありません。

(2017年6月 東京都内にて)

※ホワイト・ヘルメット:シリア国内で人命救助活動する民間人による防衛隊


新人女性プログラムディレクターによる「女性目線でのオススメ3作品」

私たちが誇るもの ~アフリカン・レディース歌劇団~※作品情報はこちら)』
普通に暮らしているように見える女性たちにも辛い過去があり、それを乗り越えようとする女性たちの姿に共感ができる作品です。

ウェルカム トゥ ジャーマニー(仮)※作品情報はこちら)』
コメディ・タッチで見やすい作品。「中年の危機」など家族の事情が描かれていて面白いですよ。

市民※作品情報はこちら)』
難民一人ひとりの事情がよくわかる。恋愛要素なんかも入ってきて「そう来たか!」という驚きが。