国連UNHCR難民映画祭2017

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東京上映(イタリア文化会館)10/8 酒井教授によるトークイベントレポート

2017年11月01日

新着情報

東京上映 イタリア文化会館10/8 酒井教授、星野事務局長によるトークイベント

2017年10月8日(日)イタリア文化会館にて「ノーウェア・トゥ・ハイド」の上映後、中東・アラブ世界に造詣の深い、千葉大学 酒井啓子教授と、国連UNHCR協会事務局長 星野守によるトークイベントが開催されました。(共催:千葉大学・グローバル関係融合研究センター/文科省科研費新学術領域「グローバル関係学」)
冒頭、星野から酒井教授に主人公の印象が聞かれました。

酒井:
「私は1980年代後半3年間イラクに住んで、この国は日本と同じように真面目な中間層が多いのだと感じていました。それが幾度もの戦争によってすさんでしまうことを心配しましたが、無骨に職務を果たそうとするノリさんを見て、ああ、まだ普通のイラク人が生きていると心強く感じました」
星野:
「映画の中で生活のため子どもにゴミ拾いをさせる父親に対して、母親が教育の必要を訴えるシーンがありました。イラク人は教育をどう考えているのでしょう」
酒井:
「イラクの人は教育を重視します。皆さんアラブというと女性はベールをかぶって教育から疎外されているというイメージがあるかもしれませんが、実は教育にかける熱意は強いのです。一方で負傷し職を失うことでプライドを喪失した父親との対比によって、イラク人が負った精神的な痛みも描かれていたと思います」
背後のスクリーンにイラクの地図を映し出し、酒井教授は舞台となったジャローラの状況を説明しました。「今まで人を助ける立場だったノリさんがイスラム国によって追い出され、逃げなければならない立場に陥る。切ない状況だったと思います」

 
東京上映 イタリア文化会館10/8 トークイベント

星野:
「しかしノリさんはこの危険な地域に戻ります、どうしてでしょう」
酒井:
「自分たちが住んでいた土地が安全ではないと認めたくなかった気持ちがあったと思います。日本でも震災による原発事故で避難を余儀なくされた人々に共通する気持ちだと思います」
星野:
「イラクは日本にとって経済的に非常に重要な関係をもっています。石油はもちろん様々なインフラ建設においても日本の技術はイラクとつながりが深く、精神的な面でも両国のプラント技術者は死んだらお互いの国に骨を埋めようと誓った、いう話があるぐらい日本に対する想いが強いのです」
酒井:
「イラクの人々は資源もないのに発展してきた日本に対して敬意をもっています。一方で石油を産出する国として日本と対等に向き合うのだという強い自信もあるのです」
星野:
「イラクでは暴力の連鎖が続いています。今のイラクの人々はこの状況をどう受け止めているのでしょう?」
酒井:
「教育があり地道に生活を築き上げていたはずのイラク人が、自らも暴力に参加するようになってしまった。映画の中でも、なぜ自分たちがこうなったのかわからない、シナリオが変わってしまったとしか思えない、という発言がでてきました。外の世界に責任を転嫁しようとする人がいる一方で、自分たちの問題として良い部分を持ち続けようとする人がいることに期待したいと思います」

 

最後に星野から作品の中で子どもが戦争、恐怖に慣れてしまったと言っていることへの感想が聞かれました。酒井教授から「悲しい状況です。子どもには恐怖感を教え直す機会が必要です。またそのためにも家族の絆が大事だと思います」とコメントがあり、トークイベントが終了しました。