国連UNHCR難民映画祭2017

参加無料

トークイベントレポート:シェルワン・ハジ氏、小野正嗣氏<10/2(月)ユーロスペース >

2017年10月23日

新着情報

主演俳優のシェルワン・ハジ

2017年10月2日(月)渋谷ユーロスペースにて、2017年ベルリン国際映画祭で銀熊賞を受賞した名匠アキ・カウリスマキ監督「希望のかなた」の先行上映が行われ、主演俳優のシェルワン・ハジさんと、小説家で立教大学教授の小野正嗣さんをお迎えしてトークイベントが開催されました。
 
登壇されたハジさんはおもむろに日本語で「イラッシャマセ」と映画の中のセリフでごあいさつ。2010年にシリアからフィンランドに移住されてきた理由を聞かれ、自分は「愛の難民」、彼女が決めたことに従ったのだ、と会場を笑いに包みました。
小野正嗣さんは、自らも難民に関するルポルタージュを書かれるなど問題への関心へも深く、また大のカウリスマキ監督ファン。映画の感想を聞かれ「監督ならではの美しい映像とユーモアもさることながら、主人公の行動が象徴するように、この映画には自身が苦しくても他者を受けいれる、そのための場所を心にもっている人を描いた物語だと思います。」と答えられました。
 
ハジさんは今回の主役に抜擢されて驚いたといいます。「俳優業から7年離れていた後に今回の話をいただき、また監督はあのカウリスマキ監督とも聞くにつけ、幸せを感じると同時に恐れも抱きました。テーマもデリケートなものであり、多くの難民のためにこの役を演じることに責任を感じました。またカウリスマキ監督という人として素晴らしい方に出会えたことは私にとって実りあるものでした。今回私は映画出演によって様々な挑戦を行い、それらはすべて貴重な経験となりました。」

小説家で立教大学教授の小野正嗣さん

小野さんから質問がありました。
「主人公はフィンランドで難民申請を却下され不法難民になってしまいました。彼はそれでもやっと再会した妹が難民申請するのを止めません。このエピソードはどう思われますか」
「監督は、中東女性は常に男に従うといったステレオタイプな見方を変えたかったのではないかと思います。申請は彼女の決断であって、主人公はその決断を尊重したのです。」小野さんは彼女のセリフにあった「死ぬのは簡単だけど、私は生きたい」という一言に普遍的な人間性を感じたそうです。
 
映画の中では怪しげな日本食レストランが出てきます。小野さんから、今回実際に来日されて日本のイメージは変わりましたか、と質問がありました。
「ほとんど変わりません」と冗談めかしていうハジさん、檀上で映画のコスチュームの鉢巻をしめ奇妙な和食店員の恰好に扮すると会場は大爆笑でした。
最後にお二人に難民問題にどう関わればいいかについてお聞きしました。
 
小野さんからは「世界は簡単には変わらないかもしれないけれど、映画を観たことで私たちの中に何か変化が起きているはずです。一人ひとりができることは限られていますが、この映画の登場人物のように心の中に他者を受け入れる余裕をもつことが大事だと思います。」
ハジさんからは「難しい問題だと思います。しかし同じ『仲間』の問題として考えればどうでしょう。人間としての人道上の価値を大切にすること、誰かに考えてもらうことは素晴らしいことであり、人間としての義務だと思います」とのメッセージをいただき、トークイベントが終了しました。