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2014年11月19日 19:48
2014インフォメーション
【インタビュー】InterFM"Flashpoint"オリバー・ペルコビッチさん
難民映画祭のために来日した「スケーティスタン」創設者のオリバー・ペルコビッチさんがInterFM"Flashpoint"に10月31日と11月7日の二週にわたり、出演されました!
インタビューの内容をご紹介いたします。
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―そもそもなんでスケーティスタン?
最初はアフガニスタンで何かしようというつもりはなかったんだよね。たまたま当時の彼女がアフガニスタンで仕事を始めたからついていったんだ。それで自分も仕事を探してみたけど見つからなかったからどうしようと思って。6歳からスケボーをやってた僕にとって、スケボーは生きがいだったから、子どもたちにスケボーを教えてみようって思ったんだ。
―じゃあ最初から「スケーティスタン」をやるつもりはなかった?
計画は何もなかったよ。国際開発の知識もなかったし。ただ「これだ」って思っただけなんだ。アフガニスタンの女の子たちの置かれた状況をみて、彼女たちの持つ力を発揮させたいって思ったんだ。アフガニスタンでもスケボーで移動してたら子どもたちは興味津々で。やりたいっていうから貸してあげたらと返してくれなくなるくらいはまっちゃったんだよ。そのとき「これはいける」って思ったんだよね。アフガニスタンの人口の半分が子どもたちなんだから、その子どもたちと何かの形でつながることが大事だと思ったんだ。その役割をスケボーがうまく担ってくれたよ。
スケボーを教えてた子どもたちには特に女の子がたくさんいたんだけど、12歳以上の女の子は外でスポーツできないから屋内の施設を作ればいいんじゃないかと思った。はじまりはほんの小さなきっかけだったんだよね。スケボーに対する情熱とか教育に対する信念とか色々重なって、徐々にたくさんの人が関わるようになってきて、プロジェクトの規模もどんどん大きくなっていったんだ。
―貧富の差や、民族間の対立など多くの問題があるアフガニスタンで、それらを乗り越えるためには?その秘訣は?
僕たちはみんな同じ地球に生きる人間なのにみんな違いばかりを気にして、いかに自分たちが似てるかってことには目を向けないんだ。たとえばアフガニスタンのどんな親だって自分の子どもが幸せになることを願ってる。それは日本の親だって同じだよね。でも僕たちは、どうしても違いばかりに気をとられちゃうんだよね。もっと共通点に目を向けるべきなのに。
―戦争など負のイメージが強いアフガニスタン。どうやってそのイメージを変えていく?
人はステレオタイプに囚われちゃうよね。確かにアフガニスタンって文化的にも違うし、危険な場所かもしれない。でも僕自身はアフガニスタンでとてもいい経験をしたし、とってもいい環境だと思うんだ。そのギャップを伝えたいと思った。
これにスケボーは重要な役割を果たしたと思う。アフガニスタンとスケボーの組み合わせって一瞬わけがわからないからね、「なにこれ?」「どういうこと?」ってね。そういうのってみんなが持つアフガニスタンのイメージをぶち破ると思うんだよ。
この国はこうなんだ、その国の人々はこういう人なんだって決め付けて、それ以外のことを知らないままでいるのはとても危険だと思う。
確かに、アフガニスタンだけじゃなくて世界中でひどいことが起こってるよね。でもいいことだってある。僕らにはポジティブな部分に目を向けることを選ぶことも出来るんだ。それを知らないのはよくない。
人は刺激を求めてるんだ。戦車とか、銃撃戦とか、とにかく憎悪とか悲壮とか怒りをあおるようなマイナスな感情をアフガニスタンという国に求めてる。だから子どもたちの笑顔とかじゃ満足できない。でもスケボーのおかげでアフガニスタンをちょっと違う目線で見るきっかけを作れたと思う。
本当はすごく人間味があるよね。アフガニスタンの子どもたちは世界中のどこの子どもたちと同じように、外でスケボーを乗り回したいし、楽しいことをしたいんだ。戦争がしたいわけじゃない。爆弾を抱えてテロリストになりたいわけじゃないんだ。アフガニスタンの一面だけをみていたらだめなんだ。
―教育面や生活面で厳しい状況にあるアフガニスタンの女の子たち。女の子がスケートボードをやることに世間の風当たりもあまりよくなかったのでは?
すっごく慎重になったし、簡単ではなかったね。どうしたかっていうと、まず女の子には男の子よりも長い時間スケボーの練習をさせたんだ。それでスケボー大会を開くと女の子が男の子たちに勝つ。だからもともとスケボー文化のないアフガニスタンでは、スケボーは女の子のスポーツなんだっていうイメージを作ることが出来たんだ。僕たちは欧米のスケボーカルチャーを押付ける気なんてなかった。アフガニスタンという国でまったく新しい文化を築ければいいと思ったんだ。サッカーみたいな他の人気スポーツは男のスポーツだと思われてるけどスケボーは誰も知らない。だから好都合だったし、親にも説明しやすかったね。
何よりもすごく勇敢な女の子が多かったから助かったよ。周りになんて言われようと気にもしないような女の子がね。女の子が外でスケボーしてるところを見て他の女の子たちもスケボーをやりたがるようになったんだ。
当時、僕はお金も家もなくてかなり困難な状況だった。それでも、僕を突き動かしたのは女の子たちがスケボーに興味を持ってくれて、それは意味があることだと強く感じていたから。
とにかく慎重なプロセスだった。女の子たちの両親と良い関係を築くことも重要だったし、地元のコミュニティにも受け入れられなければならなかった。でもぼくたちは「ホンモノ」だって認めてもらえたよ。だって僕たちはただスケボーしてるだけだしね(笑)誰の脅威にもならなかったから信用してもらえたよ。
だれもやってないことをやるのは難しいことだけど、どうにかしてその壁を壊さないといけない。女の子たちは本当に勇敢だった。公共の場で女の子がスポーツをするなんて考えられなかったからね。今ではスケートボードはアフガニスタンの女の子に一番人気のスポーツになったよ。
子どもたち自身が努力することが何よりも大事だと思った。子どもたちが持てる力を出し切らせてやりたかったんだ。僕たちが何かをやってあげるだけじゃだめなんだ。外国人が行う支援活動って限界があると思う。だって外国人にアフガニスタンのことを十分理解することは出来ないからね。それにアフガニスタンの問題はアフガニスタン人が解決しなくちゃいけない。だから僕に出来ることは、子どもたちにいろんな新しいもの見せてあげることくらいだった。
大きな施設が少しづつ出来上がっていく様子をゼロから目の当たりにした子どもたちは、自分自身にも長い時間をかけて何か大きなものを作り上げることが出来ると感じてもらえたんじゃないかな。
僕や「スケーティスタン」がやってることってごく小さなことなんだ。でも希望を与えることができた。政権がコロコロ変わるアフガニスタンのような国では長期的な視野で物事を考えると言うことが難しいよね。今日のことで精一杯なんだから。だから僕たちが教えたかったのは「長期的なスパンで何かを考える」ということ。それがいかに偉大な力になるかってことを伝えられたと思う。
僕も最初はこの計画がうまくいくなんて思ってなかったよ。でもアフガニスタンの子どもたちに会って、彼らの可能性を引き出したいと思ったんだ。そのために僕も全力を出すことが出来たと思う。
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オリバーさんが代表を務める「スケーティスタン」を追ったドキュメンタリーについて詳しくは
こちら
All Photos: (C) Courtesy of Skateistan