第8回UNHCR難民映画祭は、2013年9月28日(土)-10月6日(日)まで開催します。|8th UNHCR Refugee Film Festival will take from28 September(Sat) - 6October(Sun), 2013.

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第9回UNHCR難民映画祭。詳細につきましては、随時この公式サイトにてお知らせいたします。みなさまのご来場を心よりお待ちしております。

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2014年10月30日 12:19

2014

【ゲストトーク・関西】『シャングリラの難民』リングホーファー教授と山内麻紀子さん


『シャングリラの難民』上映後には大阪産業大学のリングホーファー・マンフレッド教授と(公財)アジア福祉教育財団難民事業本部関西支部・職員の山内麻紀子さん がトークゲストとしてご登壇されました。リングホーファー教授は、ブータン難民の直面する課題について、山内さんは日本における難民の定住支援の状況につ いて解説して下さいました。
(リングホーファー教授と山内さんの詳しいプロフィールはこちらから)


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―作品をご覧になった感想は?

山内さん 「あまり知られていないブータン難民について丁寧に描かれているという印象を持ちました。具体的にどういう理由で難民になってしまったのかということが、歴史的背景も含めて理解できる。なぜ難民になってしまったか、難民になった後に待ち受けている生活がどんなものであるのかわかりやすく伝わって来ました。」

リングホーファー教授 「自身は24年前からブータン難民と関わってきました。大変よくできている作品だと思いました。でも一方で、作品中何度か紹介されるブータン政府の発言には大きな疑問を持ちました。また根拠のない数字や、歴史的解説も何ヶ所かあり、気になりました。

この作品をご覧になってショックを受けた方もいらっしゃるかもしれません。ブータンが幸せの国であるというイメージはメディアが作り上げたものです。日本に限らず、世界中でブータンを取り上げるとき、研究者でさえ国王の民族だけを紹介してきた経緯があります。これはひとつの問題だと言えます。

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もう1つ重要な点として付け加えたいのは、1990年秋に起きた民主化デモについてです。このデモには、迫害を受けたネパール系だけではなく、国王の民族も東部の民族(シャチョップ)も参加していた点を強調しておきたいです。当時は人権のない厳しい状況だったんです。またこのデモで1000人殺害されたこともあまり伝えられていません。

また、難民の9割はネパール系ブータン人ですが、1割は国王の民族と、東部の民族(シャチョップ)です。この1割の人々については語られることがなく、忘れられています。民族浄化や民族対立という問題ではなく、これは人権の問題だと言えます。ブータンに残された人々は、いわゆるエリートです。村長、国会議員、地域のリーダー、知識人は迫害を受けずブータンに残っているんです。

ブータンはGNH(国民総幸福量)が高いといいますが、実は根拠がありません。これは国王の民族の文化を守るために登場した概念であり、一種の同化政策だといえます。2005年に初めて国政調査が行なわれましたが「happy」「very happy」「not very happy」の三択でした。実際は言論の自由などないんです。「not very happy」を選ぶなんてありえません。調査の結果97%の人が「very happy」「happy」を選びました。でも実際はブータンの50%の人が読み書きできないという現状があります。
2010年に初めてブータンにNGOが入り、幸福度についての調査を行いました。2012年にその結果が公表されていますが、59.1%があまり幸せではないといことがわかりました。」

 
―映画では第三国定住という形でブータン難民が米国などで受け入れられている様子が描かれていました。日本でもタイの難民キャンプに逃れたミャンマー難民を第三国定住で受け入れています。第三国定住で日本にきた難民の支援について教えてください。

山内さん 「日本は1万人以上のインドシナ難民を受け入れたという歴史があります。アジア福祉教育財団難民事業本部は、難民の定住先の社会への適合、行政手続き、日本語の勉強、就職支援などを行なっています。また就職した後に雇用主とのコミュニケーションがうまくとれない場合があるため、その支援も行なっています。

日本にきた難民も、映画に出てくる人と同じような経験をしています。国は違えど、国外に逃げる難民は共通した課題をもっていると感じます。」

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―多くのブータン難民を受け入れている豪州の取り組みについて教えて下さい。 

リングホーファー教授 「豪州は5000人のブータン難民を第三国定住で受け入れています。4年、遅くとも5年で国籍を得ることが出来ます。生活支援も充実しており、実際に自分が豪州で120人のブータン難民と会ったとき『ブータンには帰りたくない』と言っていました。

一方、多くのブータン難民を受け入れている米国ではブータン難民の自殺率が高いことが問題になっています。すべての移民の中でブータン難民の自殺者が一番多く、4年間で55人が亡くなりました。」

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―では最後にひとこと、私たちが出来る事についてアドバイス頂けますか?

リングホーファー教授 「真実を伝えることが大事です。また国際会議を開き、ブータンに帰りたいと望んでいる人の人権をどう尊重できるのか、話しあう場が持てたらと願います。そのためにはブータン政府への働きかけが必要です。」

山内さん 「難民問題をどこか遠くの問題ではなく、自分と関わりのある問題として関心を持ってもらいたいです。どのように難民になったかを今日皆さんご覧になったと思いますが、難民が出ない国や社会のあり方を考える良い機会だったのではないでしょうか。 

多文化共生という言葉がありますが、皆が安心して生きられる社会はどういう社会であるのか考えて頂きたいと思います。身近で、出来ることから積み重ねて行けば、大きな変化へとつながります。皆さんには今日観た事を周りの人に話し、この問題に関心を持ち続けて頂きたいと思います。」

Photo:©UNHCR
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